皆様のご支援のもとイギリスの「Great Taste Award 2017」にて、念願の最高位の3つ星を受賞しました。 “世界が認める紅茶が作りたい”と、志してから11年の時が過ぎた昨年、ついに“春摘みのべにふうき”で単一茶園、リーフティーの部門で頂点に立ちました。これは日本の紅茶用品種、育成技術、製造技がトップレベルであることを証明したものです。この栄誉を大変嬉しく光栄に存じます。10年に及ぶ技術指導を賜りました、農学博士武田善行様、そして茶樹「べにふうき」の育成に携わって頂きました藤枝市瀬戸ノ谷の園主、向島宏様には心より感謝申し上げるとともに、この受賞はお二人のご尽力により取れた栄誉だとみなさにお伝えいたします。

私が11年間紅茶製造に携わり学んだことは、最高級品質の紅茶を作るには材料になる生葉の品質がないより大切という事です。日本の茶農家さんの持っている知識と技術は世界一と私は考えます。それゆえに、今後日本から世界市場に羽ばたく紅茶が続々と生まれるでしょう。

今回「私と紅茶」と題しまして、1月号でGreat Taste Award」について、2月号で私の11年間の紅茶に関わる取り組みについて、3月号に国内と海外の市場について、お話いたします。すべて私の経験に基づくことでお話いたしますので、読者の方には満足していただけないかもしれませんが、どうぞお許しくださいませ。ほんのちょっぴり参考にしていただければ幸いに存じます。

 

グレートテイストアワード2017」審査状況について

設立・活動

イギリスの高級食品組合(the Guild of Fine Food.)ファインフードギルドは専門及びグルメ食品や飲料メーカーを奨励することを使命とし、英国で1995年に結成された組織です。この組合は、これらの食品や飲料業界での卓越性を促進するようにさまざまな活動を企画しています。その最も重要な活動の一つは、1995年に始まり、毎年恒例の「Great Taste Award」です。「Great Taste Award」は上質なスペシャルティ食品及び飲料の為の世界最大級かつ最も信頼されている受賞イベントで、世界中から集まった商品の中から厳選された最高級品質の商品が受賞する国際的なイベントです。

2017年審査状況

500名以上の審査委員員が小グループに分かれ、3月から6月の間に世界中の12,366品のスペシャルティ食品及び飲料が165部門に分かれて審査されました。これらの栄誉に値すると判断された商品数は、3つ星161商品、2つ星1,011商品、1つ星3,171商品でした。3つ星は全エントリー数の1%に過ぎず、紅茶では単一茶園、リーフティーの部門においては、静岡紅茶の「Benifuhki」とイギリスの紅茶メーカーCurious Teaの中国産の紅茶、2商品のみの受賞となりました。2017年度においては、紅茶の審査は24テーブルに各34人の審査員が就き試飲を行いました。全テーブル(24テーブル)にて全員の賛成を得て3つ星の栄誉が判断されました。 

   <授賞式会場>            <受賞した紅茶> 

 

グレートテイストアワードに出品する理由

紅茶はイギリスに生まれた喫茶の習慣に代表されると考えます。それは3回の歴史的な出来事で説明することができます。初めに、1662年ポルトガル王家のキャサリン・オブ・ブラガンサンがイギリスの国王チャールズ?世の王妃として嫁いだ際に、中国のお茶と茶道具一式、持参金として砂糖を船いっぱいと、植民地インドのボンベイと北アフリカのタンジールの領地を持参しました。キャサリンは自国でたしなんでいた喫茶の習慣を、宮廷の女性たちに広めました。中国からのお茶に貴重な砂糖を入れて飲む贅沢な習慣は、貴婦人達を魅了し、その後メアリー女王、アン女王、ビクトリア女王と受け継がれて、アフタヌーンティーの習慣がイギリス人のライフスタイルの中に定着していきました。

次の出来事は、1717年トワイニングが紅茶を取り扱う店 「ゴールデンライオン」をロンドン、ストランド通りにオープンします。当時コーヒーハウスといえば女人禁制でしたが、女性も入店できるこの画期的なサービスは多くの女性に喜ばれ、瞬く間に人気店となり、そして紅茶を飲む習慣も庶民に広がっていきます。

最後の大きな出来事は、1836年イギリス人C.A.ブルースがインドのアッサムで製造した紅茶1ポンドをロンドンに送りました。この2年後には488ポンド送り、ロンドンで紅茶のオークションが始まりました。イギリスの植民地でイギリス人の監督により製造された紅茶がイギリス人の家庭に届いたのです。紅茶は名実ともにイギリス人の飲み物になったのです。中国からの輸入で始まった喫茶の歴史は、植民地インドでのアッサム種の栽培、現地での紅茶製造と変化していったのです。この様に紅茶の歴史はイギリスで300年以上あり、世界への影響力は絶大です。日本で紅茶を製造そして販売しようとするなら、イギリスでの評価を得て、そこから学ぶことはたくさん有ります。これはとても価値のあることと考えます。このことが第一の理由です。

次の理由として、審査員コメントが挙げられます。毎年出品した紅茶に数人の審査員からコメントが届きます。良いところ、改善すべきところを教えてくれるのです。それを次のシーズンで生かしていきます。日本の中で常識的に考えられていることも、あっさりと否定されることが多くありました。“本場の紅茶を知るとはこのことか!! ”と思い知らさる・・・ この経験が次のシーズンへのエネルギーとなり “世界に認めていただける紅茶が作りたい” という強いモチベーションとなります。

下記のGreat Taste Award 2017」の審査員コメントを読んでください。私の翻訳は参考程度にして、ご自分で翻訳してみてください。イギリス人の持っている感性が日本人とは違うことがお分かりいただけると思います。