茶樹の原産地
茶樹の起源の地として中国南西部の雲南省が最も有力とされています。この地方で産する茶樹に雲南大葉種があり、茶の原種に近いとされています。葉が大きく喬木のためアッサム系に分類されます。この雲南大葉種の代表としては、1951年、雲南省の西双版納(シーサンバンナ)で発見されました、栽培種として世界最古とされる樹齢800年の「茶樹王」があります。しかし1994年の落雷で枯れ、現在は樹齢500年前後と思われる2代目が指定されています。周辺の原生林では樹齢1700年という「茶王樹」などさらに古い木も見つかっていますが、これらは茶の近縁種です。
茶樹の系統には大きく分けて潅木の中国種(小葉種)と喬木のアッサム種(大葉種)の2種があります。その形態、性質は全く別の植物と思われるほどに異なりますが、相互に自由に交配して雑種ができます。これは根本的には中国種(小葉種)もアッサム種(大葉種)も同じ「茶の木」に起源を持つからなのです。
中国種
中国南西部の雲南省に起源をもつ茶の木は、揚子江に沿って茶の栽培地帯が東に拡大するにつれて、冬の寒さに適応するために葉の小さな潅木の茶樹が生き残り、また緑茶として適度な成分の樹が栽培されていったと考えられています。中国種は耐寒性に優れ、冬に凍結する地域でも栽培できます。比較的カテキン含有量が少なく、酵素の活性も弱く酸化発酵しにくいことから、一般に緑茶向きとされています。中国、日本などの緑茶生産国で栽培されているほか、イラン、グルジア、トルコなど冬の寒さが厳しいところでは中国種を栽培して紅茶を作っています。
近年日本でも中国種の茶葉で紅茶を作っている農家が増えていますが、苦味、渋みがなくやさしく甘い味わいの紅茶となるようです。
アッサム種
1823年、英国人M.R.ブルースがアッサムの奥地シブサガルの近郊で野生のアッサム種を発見しました。当時英国の植物学者は、葉が中国種よりはるかに大きく樹木も喬木であり、形態があまりにも違うために茶と認めませんでしたが、後に弟のC.A.ブルースがこの植物を栽培し、花や実をカルカッタの植物園に植えられていた中国種と比較、最終的に英国王立学会が茶の変種と判断しました。耐寒性が弱く、栽培は無霜地域に限られますが、カテキン含有量が多く酵素の活性が強く発酵しやすいことから、紅茶向きとされています。生育が良く葉も大きく収量があり、アッサム地域はもちろん、スリランカ低地、インドネシア、ケニアなど紅茶の新興産地で無霜地域には、殆どこのアッサム種の選抜品種が導入されています。深みのある赤い水色、やわらかな香り、コクのある力強い味を特徴としています。ミルクと相性のよい紅茶です。
アッサム雑種
かつてインドのダージリンやスリランカの高地には中国種が導入され、今でもわずかに残っていますが、今日では中国種にアッサム種を交配したアッサム雑種が主力であり、高い評価を得ています。これらの産地でクオリティーシーズンにできた最上級の紅茶は、花や果物にもたとえられる、優雅で特徴的な香りを持つことで知られています。
現在、世界の紅茶生産を見たとき、低緯度(熱帯、亜熱帯)地方では標高の高さが品質を左右すると言われ、標高1000m〜2000mといった高地で高品質茶生産がされています。
高緯度(温帯)地方、静岡県川根地域なら標高500m〜600mで充分、これらと対等な品質の商品が出来ます。又、これ以上の標高となると寒さで冬を越せず、お茶の栽培が困難となります。
日本でも明治時代より、アッサム種が導入され日本在来種(中国種)との交配が行われてきており、「べにほまれ」「べにひかり」「べにふうき」など寒さに強く、日本での栽培に適し、世界的にも通用する紅茶用優良品種が多く育成されています。
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